最終回 明日の営農のヒントは、「お客のニーズ」の中にある
「お客のニーズに対応せよと言われるが、そもそもニーズとは、一体何ですか?」農業界の勉強会でこんな質問を受けたとき、いつも以下のように答えています。
「ニーズを、お客様が望んでいること、欲しがっているモノ・コトなどと考えると対応策は簡単には見つかりませんが、お客様が日々困っていること、悩んでいること、解決したがっていることと考えていくと、対応策は見つけやすいはずです」。
「例えば、仕事を持っている主婦は平日の夕食づくりに困っているだろう、と考えたスーパ−が総菜商品を充実させたら案の定、喜ばれた、これがニーズ対応の典型例です」
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世の中の全ての商品・サービスは、お客様ニーズに対応すべく誕生しているのです。
農産物も同じです。どんな作物をどう作ったら、どんな加工方法・販売方法を取り入れたら、喜ばれるか、たくさん買っていただけるか、ここから出発すべきなのです。
つまり、明日の営農のヒントは、あなたの農産物をまず買って下さる方々(主に流通)、そして、農産物を最終的に食べてくださる消費者の方々のニーズの中にあるのです。
ここで大事なことは、食品流通業の方々から発せられるニーズもその基を辿ってみれば消費者から生まれている、つまり農業界は、消費者ニーズにも敏感になるべきなのです。
以下に、お客様のニーズを探し出し、見事に対応し成功している事例を紹介します。
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即席みそ汁は、味噌と具が別袋になっているのが今の主流。そのせいだろうか、味も格段に進歩しているが、袋も新しい工夫で進歩しているのをご存知だろうか。
通常この種の袋は、納豆の醤油やカラシ袋がその代表だが、ここを切れと▲印があるものの、▲が小さ過ぎて場所が分かりにくい、しかも、切りにくい、空けにくい。
今、多くの即席みそ汁には切り口が複数ある、お好きなところで切れますというものまである。最近ご利用が増えている高齢者のために、切りやすいように改良したそうだ。
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某県にある牧場併設のレストランの人気メニューは、2000円のステキーランチ。2000円という価格は、牧場経営者の奥さんの「調査」結果から決められたそうだ。
彼女の調査手法は、街に住む女性友達に聞き回ることだった。「女性グループでランチしたとき、いくら位使う?いくら位で済ませたい?」。上限は2500円だったという。
まず、お客様が無理せず、気持ち良く支払える金額で価格設定。その後、女性好みになるよう工夫した。客と店、双方に無理がないから素晴らしいメニューが出来上がった。
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ある農産物加工グループは土産用加工品をつくるとき、容量を変え2種類の価格帯で商品化するという。500円以下の商品と、1000円近い商品という具合だ。
ヒントは土産物店でパートをしている仲間の経験談だった。500円以下のものほど無造作に買われるが、1000円に近づくにつれ買い方が慎重になる。数多く配る土産と大事な方へのお土産との金額的分岐点は500円前後らしい。それならばと考えた。
2種類の価格帯で商品化すれば、両方のニーズをキャッチできると解釈したという。
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「あなたの農産物に付加価値を付けよと言われるが、付加価値とは何ですか?」これも農業界の勉強会で多い質問です。これも以下のように答えています。
付加価値とは、「その農産物が本来持つ効能や機能、個性や特色に、プラスアルファーされた魅力のこと」ですが、「生産者のためにプラスするものではなく、お客様に意味・意義ある魅力をプラスすること」・・・少々乱暴ですが、これが付加価値の正体です。
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「お客様のため、お客様にとって意義・意味あること」、それがニーズ、付加価値との解釈に納得出来れば、お分かりですね、明日の営農のヒントはお客の中にあるのです。
この1年間お読みいただいた、愚作連載「異業種・生活者にヒントあり」は、今回を以て終わらせていただきます。この1年のお付き合い、ありがとうございました。
JAMM取締役 鈴木肇
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