№11 「顔が見えない」からこそ、無防備な電話対応はアブナイ

顔が見えるから安心・安全」という農業界のアピール、これは一般企業からすると危険極まりない手法だと思うのだが、農業界は、その危険性が感知できないようだ。
 直売所やスーパ−の店頭などで生産者の氏名の公開、あるいは生産者の顔写真の掲出、それらを安心・安全の根拠としているようだが、客である生活者の受け止め方は、違う。「コトが生じたら、責任をとってくれるのは、この人なのね」、そう受け止めている。
 今回は、「顔が見える」ということに目を奪われ、顔が見えないことの怖さへの無防備、特に電話対応の怖さ・危険性、それについて考えてみたい。
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 多くの著名企業を得意先に持っていることでも知られているサービス業大手の某社に電話したときの話だが、「◯○社へ行っています」と、話したい相手の出先を教えられた。こちらが何者かを確かめもせず、自社の得意先名をしゃべってしまう。当方が○○社のライバル企業だとしたら・・・その後の騒ぎは想像しただけでも、恐ろしいではないか。
 対応したのはまだ新人の域を出ない若手社員のようだったが、企業内の電話対応術の大方は、机を並べる先輩社員たちの影響が大きい、彼らの対応ぶりが教科書になる。
 若手社員が無防備な対応をしてしまったこのサービス業大手某社、社員教育の在り方、社風までしっかり曝け出してしまったことになる。この修復は容易ではない。
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 似たような話だが、頼みもしないのに不在相手の携帯電話の番号を教えられることが最近多くなった。「外出中です、◯○時帰社予定です・・・お急ぎですか?・・・いかがいたしましょうか?」というべきだが、携帯番号を教えた方が「気が利く」と解釈する若手社員が多いらしく、同様な対応は、民間企業だけではなく、公共機関でも多い。
 しかし、頼まれもせず、携帯の電号を教えることは、電話をかけ直せと言っていることに等しく失礼極まりない対応だが、近ごろはベテランらしき社員もそうする。
 「顧客満足度」にエネルギーを使う企業は多いが、顧客の満足度とは、まずは顧客の「神経を逆なでしないこと」、そこから始めれば、携帯電話番号はまず教えないはず。              
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 担当者に、直接つながるダイヤルイン方式の会社での話だが、間違った部署にかけてしまったり、相手が異動していたりすると、「◯◯の電話は◯◯◯◯番です」と、返されることがよくある。「御社の電話は、◯◯氏に回せないの?」と問うと、渋々回す。
 大した用事でなければ「躾ができていない会社だ」、それで済むだろうが、その電話がクレームの電話だったら事態はますます深刻化するだろう。その電話が新規取引の打診だったら、せっかくのビジネスチャンスを逃してしまったことになるに違いない。
 たかが電話の話だが、対応一つで御社のすべてを気取られてしまう、そう考えた方がいい。農業界は法人組織でもそうした自覚と対策を持っているところが未だ少ない。
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 ところで、無防備な電話対応失敗を回避、改善する方法はあるか?・・・簡単である。
気が置けない知人・友人に、「電話対応に対するモニター」になってもらうことだ。
些細なことほど役立つ、重箱の隅をつっつくようにチェックしてもらうといい。
 電話応対の出来不出来はマナーや社員教育だけの問題ではない。経営組織そのものから派生している、それが明確に浮かび上がってくるはずだ。


JAMM取締役 鈴木肇



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