No.9 そこで正体を見抜かれる・・・そこで思いを評価いただける
売り手側が軽く考えていることも、買い手からすればそこが「決定的要因」になることは少なくない。そんなことまで、そこまでチェックされるのか、そういう思いはあろうが、「買い手の心、売り手知らず」、これは商い下手の共通点のようだ。
農業界も、「買い手発想がなかなか身につかない業界」とずっと言われ続けてきたが最近はそう批判する業界にも、本質を云々される問題事例が増えてきたようだ。
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ワインで知られる山梨県。そのレストランはブドウ畑を見下ろす格好の場所にあった。J Rの電車遅れで予約から1時間遅れで着いた。案内された席は窓際、実に眺めが良い席だった。2週間前に電話予約したときの感じの良さを思い出した。我が選択は間違いなかったと座ったが、がっかりしてしまった。予約席を示すプレートが置かれていない。
プレートは、予約席であることを他の客と店のスタッフに告げるためだけにあるのではない。「お待ちしておりました」、予約客へ告げるメッセージツールでもあるはずだ。予約時間に遅れる、それもきっちり連絡したのに・・・一気に興ざめしてしまった。
そのせいだろう、ワインにも料理にも味を感じなかった。もちろん二度と行く気はない。
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間もなく満期が来る定期預金を新型預金商品に切り替えませんか、という提案電話が某銀行の女性行員からあった。なかなか良い商品らしい。そう告げると即、来店希望日を聞かれた、来店?・・・それには触れず、翌週に決めることにした。翌週の電話でもまた来店の希望日を聞く。「キミの銀行は、いつも客を呼びつけるのか?」とからかった。電話の向こうから、こちらがびっくりするほど狼狽した気配が伝わってきた。
来店してくれる客が多いだろうがそれは結果論であり、顧客宅に伺うのが営業の基本。だが、この銀行にはそういう営業文化はないらしい。社風に毒されてしまっただけの話だろうが、それに組み込まれるのもシャクなので、別の銀行の新商品にすることにした。
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長年お世話になっている歯科医院から「歯の定期検診のお知らせ」ハガキが来た。半年前の不愉快な応対を思い出した。この医院では2~3人を同時に治療する方式を取っている。そこで前回は、治療イスに案内されてから30分ほども待たされた。予約した意味がないではないかと怒って帰ってきた。それを思い出しながら、ハガキを裏返して驚いた。「前回来院時に不快な思いをさせてしまい、申し訳ございませんでした」、と手書きの添え書きがあるではないか。この医院は、やがて開業を目指す若手医師が多く、担当医は頻繁に変わる。今回の発信医師も、前回の担当者ではなかった。しかし、医院としての「顧客対応カルテ」があるらしい・・・これには感心した。即刻予約した。
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神奈川県湘南海岸に面した磯料理店。ここが人気店であるのは、お刺身定食のお盆に、添えてこられる手書きの紙には、その日の刺身の名が盛り付け位置通りに書かれている。地魚を売り物にする商いは多いが、ここまでちゃんと説明する店は、まず無い。
この店が最近、今一つ進化した。定食のお新香、これまではスーパーで買ってきたらしいお新香を出していたのだが、これが自家製の漬け物に代わった。とは言っても、単なる塩揉みでしかないのだが、「この季節だからおしいい地元の野菜の香物です」という添え書き付きで出てくる。「たかが香物、されど香物」。またファンが増えたようだ。
JAMM取締役 鈴木肇
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