No.8 その一言が幸せを呼ぶ・不幸を呼ぶ、口下手は許されない

 農業界は長年、口下手、言葉足らずを許されてきた節がある。地域によっては未だ、話上手、コミュニケーション上手な農業者を指して、「あいつは、商売人に成り下がった」という揶揄があるとも聞く。しかし、口下手、言葉足らずからは、「そのお店、その会社の実態や力量をさらけ出してしてしまう、見抜かれてしまうことが少なくない」、そう考えた方がいい。口が原因で、ご贔屓さんを増やしたり、悪評判を生んでしまったり、そういう例は多い。
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 この5月の始め、日本を代表する大手スーパ−のレジでの話。見るからに新入社員らしい女性店員が言った、「以上で、よろしかったでしょうか?!」ファミリーレストランでよく聞くが、ここはスーパ−だから「カゴに入れた以外の商品はありませんか?」と問い質されたように聞こえてしまったから、笑ってしまった。そばにいた指導係らしい女性は、そういう物言いを拙いと思わないらしく、無言だった。日本を代表する大手スーパ−だが、この社の社員教育はこの程度のものらしい・・・呆れた!
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 牛と豚、カレーライスの肉はどっちを使うか、その境界線は愛知県豊橋市付近らしい。その地のファミリーレストランで、大阪生まれ・大阪育ちの友人がカレーを頼んだ。運ばれて来た豚肉カレーに友人は怒った。「豚カレーなら、最初からそう言えよ!」「当店でカレーといえば豚です。ビーフカレーをお望みなら、そうオーダーください。メニューにちゃんとありますでしょ」と店長らしい中年店員、そこで大騒動になった。友人は以降、牛か豚かの話になると、この店の実名を挙げながら、罵倒、しまくる。
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 埼玉県さいたま市にある「鉄道博物館」。なかなかの人気博物館らしい。ここに、昔の食堂車のメニューを再現した料理を食べさせてくれるコーナーがある。その日はカレーライスを注文した。チケットを片手に店内を見回すが、空きテーブルがない。4人席に座る母子2人連れの席が目に付いた。相席を頼んだら快く受けてくれた。そこへ、ウエイトレスが来た。開口一番は、私ではなく、母子連れ向けだった。「相席のご協力、ありがとうございます」・・・ここの気配り教育は凄い!
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 夕刻、J R高山線で高山へ向かった。岐阜駅を出るやいなや早々に飲み出した。その日は、一人旅だったがどういうわけか酒がすすみ、車内販売が来るたびに追加しているうちに気になってきた。客が少ない平日の夕刻、車内販売は途中で終わってしまうのではないか。それを問い質すと、恐れ入った応えが返ってきた。「終点、高山までお供します」。ベテランさんではない、まだ20代半ばの彼女が「お共します」とは・・・。思わず、ホテルでの寝酒分まで買ってしまった。
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 その一言が幸せを呼ぶ・不幸を呼ぶ・・・農業界の口下手は「命取り」になる時代だ。


JAMM取締役 鈴木肇



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