No.6 文句があれば、向こうから言って・・・来ない

 農業界は長年、人と向き合い、言葉を交わしながらの「納品」「販売」をして来なかった。個々の農家でいえば、J Aの集荷場に農産物を置いてくること「出荷」が納品、販売だった。そこでいつの間にか「文句があれば、J A から言ってくるだろう」という習性が身に付いてしまったようだ。この「文句があれば向こうから信仰」は、J A だけではなく様々な納品先・販売先と取り引きするようになった今でも、生き続けている。
 今回は、「文句があれば向こうから信仰」は、アブナイですよという話を書く。
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 全国展開している和食系ファミレス店。「大名御膳」なる名の寿司定食を頼んだ。
まずはお吸い物と、口にしたら熱くないどころか温い。一遍に食欲が萎えてしまったからもう後は、寿司の味も気に入らなくなってしまった。注文が入りお膳をセットする時、お椀もセットしてしまうに違いない、だから温い。ファミレスで寿司を注文した引け目もあり、店に文句は言わなかったが、この店の話が出ると、この温いお椀の話をする。               
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 東京近郊の漁港の磯料理店。以前偶然入ったお店だが美味しかったので、今回はわざわざ行った。祝日のせいか混んでいて2階席に案内されたのだが、呆れてしまった。
2階のスタッフは一目で高校生と分かるアルバイト員だけ。ちゃんとした大人の、プロのスタッフがいないではないか。即、座りもせず出てきた。レジに居たのはオーナーらしかったが、入ったばかりですぐ帰る客をいぶかる気配は皆無だった。
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 東京・J R神田駅付近の飲屋街。開店前とは承知で入り口を開けたら、「5時からですから」、ピッシャと入店を断わられた。仕方なくすぐ隣の店を開けてみたら、今度は「あと15分ほど、飲み物だけでいいですか?!」と来た。最初の店はチェーン店だが、後から友人に聞くと、店員が素っ気ないと定評があるらしい。その日は軽く飲む積もりだったが最初の店の悪口で盛り上がり、2時間近く、2人で1万円近くいってしまった。
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 不愉快な思いをしても客の多くは店に直接文句を言わない、が、二度と来てくれない。しかし、それだけでは済まない。人は、不愉快な体験をすると、誰かに話したくなる。これが怖い。実名付きの悪い評判は、信じられないスピードで遠くまで広がるからだ。ビジネス上でのやりとりもまったく同じだ。文句があれば・・・と呑気に構えていると、もうとっくに取引先リストから外されているかもしれない。「文句」が来るとすればそれは、不始末に対する補償を求める連絡かもしれない。そう思っていた方がいい。


JAMM取締役 鈴木肇



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