第4回:企業の活力は「エンパワーメント」から

食品偽装の報道が相次いでおり、その殆どが内部告発によるものだそうです。
企業の経営者や幹部からの指示を悪と思いながらも止むを得ず受けざるを得なかった従業員の心中はどのようであったか図り知れません。
偽装を隠蔽することの無いように企業に求められるのは、法令遵守、経営者の倫理観はもとより、具体的な情報開示による透明性や第三者によるチェック機関の設置も必要です。
さて、企業のマーケティング活動には消費者や取引先(流通・金融・資材・飼料・肥料会社など)、一般社会を対象とするアウター・マーケティングと株主や社員、パートなどの従業員を対象とするインナー・マーケティングがあります。
このインナー・マーケティングで重要な要素が従業員・スタッフを対象とした「エンパワーメント」です。
「エンパワーメント」とは「権力や権利を与える」という意味ですが、マーケティング用語としては「社員やパートなどのスタッフがより一層素晴らしいアイディアを出して、そのスタッフがイニシアティブを取ることを奨励し、そのアイディア遂行に当たって権限を与えること」です。
端的に言えば「社員にやる気を起こさせる、モチベーションを高める」ことが経営者の務めなのです。
私たちが訪ねる殆どの生産農家は社員の礼儀が正しいし、きちんとした挨拶が出来ています。社員のモラルの高い企業は取引先や消費者に良い印象を与えることになり、社員の一人一人が会社を代表しているのだということを経営者は忘れてはいけません。
近年、安全・安心というキーワードに象徴されるように、GAPやISO14001を取得する生産者も多く見られますが、私たちがその効果について尋ねると、どうも売り上げアップにつながるというよりも社員のモラルが高まったという回答が多く、ひいては生産性の向上や効率・能率向上、そしてコストダウンにつながるという結果になっているようです。
もう一つのエンパワーメントにつながる対策は、法人化であると思われます。法人化は社会的認知を得て、農業以外の一般社会と向き合わなければならず、自ずから社会的責任も持たなければなりません。従って、社員も社会の一員としての行動が求められるのでモチベーションアップにつながるのです。
食の安全・安心が求められる今日、「エンパワーメント」こそが企業発展の基盤となることは間違いありません。

JAMM取締役 林辰男



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