第3回:ブランドは「物語づくり」

食の不祥事が相次いで報道されています。数百年続いた老舗や全国的に有名な企業にまで偽装や不適切表示が指摘され、代表者がテレビで陳謝している光景を何か普通に見られます。
なぜ、このようにブランドの崩壊現象が起きるのでしょうか。実はブランドは企業が自社の商品に名前をつけて他社との差別化を図ろうと発想したものだからなのです。
しかしながら新商品に名前を付ければそれでブランドとは言えません。ブランドは「商品」や「モノ」のように形があったり、消費されるものではないからです。
ブランドとは市場に披露され、生活者に認知された時点から企業の持ち物から離れて、その企業や商品を認知、購入、使用したりする生活者の持ち物になるのです。ですから、ブランドは長期的な企業と生活者の関係づくりの中でお客様の心の中でじっくりと醸成されて熟成されていくのです、それはあたかも日本酒やワインと同じなのかもしれません。企業とお客様の心が通い合う共振作用なのです。
ですから一度確立したブランドはとても強く、一人歩きするのです。企業理念や企業行動の指針を的確にしかも端的に伝えるからです。ブランドの価値は価格決定や流通への影響を強くし、新商品開発にも有利ですし、コストの削減にもつながります。ブランドの確立は企業のマーケティング活動を容易にすることなのです。企業はブランドを通してお客様に語りかけ、信頼を約束し、ロイヤリティを確固とするものです。
お客様のニーズにあった商品やサービスの提供だけでは満足を与えられません。数多の企業や商品から自社の商品を選んでもらう回路をお客様の心に形成させるのがブランドなのです。企業の実態以上に大きく見えるブランドもたくさんあります。ですからブランドには企業や商品を代弁する役割があるのです。
一般の商工業製品と同様に農産物にとってもブランドづくりは大切でしょう。特に農業は風土や気象条件で変化するものです。ブランドは作り手の考え方、想いや農産物の成り立ち、さらにその地にまつわる様々な物語を持っていると思います。
その「物語づくり」から始まって、お客様との密接な関係づくりが望まれるのではないかと思います。


JAMM取締役 林辰男



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